ホルモン補充療法(HRT)との併用は?更年期治療における鍼灸・漢方の立ち位置

更年期のつらい症状を軽くするための治療には、主に二つの方法があります。一つは病院で行うホルモン補充療法(HRT)、もう一つが当院のような鍼灸・漢方(東洋医学)です。

どちらか一方を選ぶ必要はありません。実は、これらはとてもうまく一緒に使える方法なんです。


病院での治療:HRTとは?

HRTは、更年期の原因である女性ホルモンの急な減り方を、薬でゆっくりにする治療です。

  • 得意なこと: 突然のほてり(ホットフラッシュ)や汗膣の乾燥など、ホルモンが関係する症状には特に効果があります。骨が弱くなるのを防ぐ効果もあります。
  • 注意点: 人によっては、がんや血栓症などのリスクで使えない場合があります。また、吐き気だるさなどの副作用を感じる方もいます。

鍼灸・漢方:体の土台を整える東洋医学

東洋医学では、更年期を「病気」ではなく、「体の変化の時期」と捉えます。この変化の時期に、体の中の「気(エネルギー)」「血(血液)」「水(水分)」のバランスが崩れることが、不調の原因だと考えます。

1. HRTが使えない方の安心できる選択肢

HRTを使いたくない方や、持病などで使えない方にとって、鍼灸や漢方は安全性が高く、体に優しい代わりの治療法になります。全身のバランスを根本から整えて、症状を楽にしていきます。

2. HRTの効き目を助ける役割

HRTをしていても、肩こり、頭痛、冷え、だるさ、寝不足などの「なんとなく調子が悪い」症状が残ることがよくあります。鍼灸や漢方は、このようなHRTではカバーしきれない残った不調の改善に優れています。

  • 鍼灸: 自律神経の乱れを整え、血の巡りを良くします。これにより、急なほてりや動悸、肩こりなどが和らぎます。
  • 漢方: その人の体質(冷えやすい、イライラしやすいなど)を細かく見て、あなただけの薬を選びます。体の内側から力をつけることで、不調を根本から改善します。

3. 副作用を軽くする・将来の病気を防ぐ

HRTの副作用でむくみ吐き気を感じた場合、漢方薬を一緒に使うことで、それらの症状を和らげる手助けができます。また、更年期で落ちた体力や免疫力を上げて、これから先の人生を元気に過ごすための体づくりができるのが、鍼灸・漢方の大きなメリットです。


大切なこと:専門家同士の連携

HRTと鍼灸・漢方を一緒に進める場合は、必ず病院の先生(産婦人科)と当院の専門家に、今受けている治療内容をすべて伝えてください。

お互いの治療を理解して進めることで、更年期のつらい期間を、より快適に、自分らしく過ごすことができるでしょう。

ご自身の体質やお悩みに合わせて、最適な治療プランを一緒に考えていきましょう。