更年期うつ・不安感に寄り添う-漢方薬とツボ刺激の実践ガイドつき

更年期は、ホットフラッシュや肩こりといった身体の不調だけでなく、イライラ、不安、落ち込みなど、精神面での「揺らぎ」が強く現れる時期です。女性は、閉経前後のホルモン変化により、気分の落ち込みや不安感、涙もろさ、焦燥感などが現れやすくなります。男性もまた、50代以降に「やる気が出ない」「孤独を感じる」といった心の不調を訴えることがあります。特に、この精神症状が重く、日常生活に支障をきたす状態を、更年期うつや更年期に伴う抑うつ状態と呼びます。

この時期の心の不調は、決して「気の持ちよう」ではありません。ホルモンの急激な変化が脳に影響を与えているサインです。

こうした“更年期うつ”は、東洋医学では「肝気鬱結」や「心脾両虚」といった体のバランスの乱れとして捉え、漢方薬や鍼灸によって穏やかに整えていきます。
当店では、東洋医学の視点から、この心の揺らぎにどう寄り添い、乗り越えていくかをご提案します。

I. 更年期に心が揺らぐメカニズム

更年期における心の不調は、主にホルモンバランスの乱れ自律神経の混乱が原因ですが、東洋医学ではその背景に「肝」「心」「腎」の三つのバランスの崩れがあると捉えます。

1. 精神症状の根本原因

  • 「腎」の衰えと体力の低下生命力や活力を司る「腎(じん)」は、加齢とともに自然に衰えるものです。更年期はただでさえホルモンが急変する時期ですが、「腎」の衰えによる体力や気力の低下が加わることで、「自分には乗り切る力がない」という無力感につながり、不安をより一層増幅させます。
  • 「肝」の気の滞り(イライラ、怒り)ストレスを司る「肝(かん)」は、全身のエネルギーである「気」をスムーズに巡らせる役割を担います。更年期のストレスやホルモン低下により「肝」が乱れると、気の流れが滞り、イライラやヒステリックな感情として現れます。
  • 「心」の機能低下(不安、不眠)東洋医学で「心(しん)」は、精神や意識を司る最も重要な臓器と考えます。「心」が疲弊すると、強い不安感、動悸、そして眠れないといった症状(心神不寧)を引き起こします。

II. 鍼灸と漢方による心の不調へのアプローチ

更年期うつや抑うつ状態のケアでは、抗うつ薬などの西洋薬も有効ですが、東洋医学は「自律神経の安定」と「血や気の流れの改善」を通じて、心身の回復力を高めることを目的とします。

1. 鍼灸:揺らぎを鎮める自律神経の調整

鍼灸は、身体のツボを通じて、乱れた脳の視床下部(自律神経の中枢)に直接アプローチします。

  • 不安と緊張の緩和: 緊張している自律神経を鎮静化させ、リラックスモード(副交感神経)に切り替えることで、不安感や動悸を和らげます。
  • 睡眠の質の向上: 眠りを司る「心」に関わるツボを刺激し、不眠を解消します。身体の緊張が緩むことで、夜間の発汗(寝汗)の改善にもつながります。

2. 漢方:体質に合わせた内側からの支え

漢方薬は、症状そのものを抑えるのではなく、「肝」「心」「腎」のバランスを整え、心の土台を強化します。

  • 意欲・体力回復(補腎): 衰えた「腎」の働きを補う漢方(補腎薬)を使い、気力と体力を根本から引き上げます。これにより、不安の土台にある無力感を解消します。
  • イライラ対策: 「肝」の気の滞りを解消する漢方(疏肝薬)で、イライラや怒りの感情を鎮め、ストレスによる過緊張を緩めます。
  • 心の栄養補給: 精神を安定させる漢方(安神薬)や、不足している血(栄養)を補う漢方(補血薬)**を使用し、不安感や不眠の原因となる「心」の虚弱を根本から支えます。

III. 焦らず、心の揺らぎに寄り添う体質改善を

更年期うつは、適切なケアをすれば必ず改善に向かいます。焦りや自己否定は、症状をさらに悪化させてしまうため、まずは「今はホルモンのせいで心が不安定なんだ」とご自身を労わることが大切です。

当店では、単につらい症状を和らげるだけでなく、更年期の時期を通じて、お客様の「心の揺らぎ」に深く寄り添い、心身の活力を取り戻すためのオーダーメイドのケアをご提案します。

つらい時期だからこそ、専門的なサポートを受けながら、穏やかな毎日を取り戻しましょう。


Ⅳ.漢方薬とツボ刺激の実践ガイド

使われる漢方薬やツボはたくさんありますが、その一部を例に紹介します。

漢方で心のバランスを整える

心の不調に対して、漢方では体質に応じた処方を選びます。代表的なものに以下のような薬があります:

  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):イライラや不安感、月経不順を伴う女性に。肝の気を巡らせ、心を穏やかにします。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):不安感や動悸、眠れない夜が続く方に。気の高ぶりを鎮め、精神を安定させます。
  • 帰脾湯(きひとう):疲れやすく、気力が湧かない方に。心と脾を補い、気血を充実させます。

漢方は、症状だけでなく“人”を診る医学。同じ「不安感」でも、体質や生活背景によって処方が変わります。木蘭堂では、丁寧な問診を通じて、あなたに合った漢方薬をご提案します。

鍼灸で気の巡りを促す

鍼灸は、心身の緊張をほぐし、気の巡りを整えることで、精神的な不調に働きかけます。緊張が続くと時々息をすることを忘れるくらい呼吸を止めてしまうこともあります。このような方に鍼灸を合わせるとより効果を実感できます。更年期うつに効果的なツボには以下のようなものがあります:

  • 百会(ひゃくえ):頭頂部にあるツボで、気の滞りを解消し、精神を安定させます。
  • 神門(しんもん):手首の内側にあり、心の疲れを癒すツボ。不眠や不安感に。
  • 内関(ないかん):手首の内側にあり、胸のつかえや動悸、情緒不安定に効果的。
  • 三陰交(さんいんこう):足の内側にあり、女性ホルモンの調整や冷えの改善にも。

鍼灸は、薬に頼らず自然治癒力を高める療法。施術後は「呼吸が深くなった」「気持ちが軽くなった」と感じる方も多く、心のケアとしても非常に有効です。

心に寄り添う東洋医学の力

更年期の心の不調は、決して“気のせい”ではありません。東洋医学は、心と体を一つのものとして捉え、優しく寄り添いながら回復へと導きます。「誰にも言えない不安がある」「薬に頼りたくない」——そんな方こそ、木蘭堂の漢方こらんプラスの鍼灸に触れてみてください。心がふっと軽くなる瞬間を、私たちは一緒に育んでいきます。